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NY1page.comブログ

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私がニューヨークへ渡った90年代ほどホームレスの数は多くないが、やはりまだニューヨークにはホームレスがたくさんいる。

ホームレスは夏になると虫がわくように増えてくる。これはパフォーマーホームレスが存在するからである。 もちろんこの厳しい冬を外で震えながら過した本物もいるのだが、本物はドラッグや酒におぼれているので、お金を集めるなどというパフォーマンスをやっていられない。

さてパフォーマーホームレスというのは、小遣い稼ぎのためだけに街頭に立っていたり、電車の中でわざとホームレスのふりをしてお金を集めて回る人たちのこと。彼らは、野良犬の数十倍は臭気を漂わせ、今にも消えてなくなってしまいそうに痩せこけているから、見ているだけでも哀れである。

その姿でヨトヨトと地下鉄の中を歩いてお金を集めてまわるのだから、ついつい誰もがクォーター(25セント)を差し出されたカップに入れてしまう。

このパフォーマーホームレスに関しての面白い話を、以前イーストビレッジに住んでいた日本人の友人から聞いたことがある。友人は、 ほとんど毎日、 彼のアパートの近くに立っているホームレスにクォーターを渡していた。

ある日、 仕事先である(今はなき)ワールドトレードセンター付近を歩いていた。ビルの谷間にも、夏の強い陽射しがギラギラと差し込む。それを避けるかのように、見覚えのある男がビルの陰で煙草を吹かしながら、涼しい顔をして立っていた。どこかで見た顔だなと、記憶をたどる。

いつもと違う場所で見るので気づかなかったが、この男は自宅でいつもクォーターを渡しているホームレスである。今日は、別の場所に立っているんだなと不思議に思いながらも、ホームレスだと気付いた友人は、日頃の習慣で慌ててポケットを探ってクォーターを取り出した。そしてホームレスに近づくとクォーター手渡そうとした。

「ノーサンキュー」クォーターをにぎりしめた友人の右手をちらりと見て、ホームレスはまるで投資家のビジネスマンのようにクールな様子で首を横に振った。その反応に驚いた友人は、「どうしたんだ?なぜクォーターを受け取らない?」と聞いた。

ホームレスはさらりと「今、バケーションなんだ」と言いながら、スーッと煙草を吹かしたのだった。

別の友人の話では、やはり彼女の家の近所にいつも立っている女性のホームレスがいた。会えば必ずクォーターをカップに投げ込んでいた。 その日もホームレスが立っていたので、 彼女はバッグの中や御財布をあさってクォーターを探した。 だが、 その日はクォーターどころか小銭が一枚も見つからない。仕方ないので、お金以外でなにか足しになる物をと、持っていた煙草を善意であげる事にした。

ところがこのホームレス、その煙草を受け取るやいなや「こんなものぉ~」 という感じで道路に投げ捨てたのだった。友人はホームレスというとシケモクをあさっているイメージがあったので、彼らがタバコを吸うのなんて当たり前で、煙草をもらえると喜ぶのだと思っていた。ところが予想外の反応に、ノンスモーカーのホームレスも存在することを思い知った。

私がニューヨークホームレスパフォーマー業界でベストパフォーマンス賞をあげたいのは、地下鉄のミッドタウンあたりで乗ってくる貧乏で貧乏で仕方ないって顔をした白人夫婦。彼らは、着実に毎年の興行収入を増やしているはずだ。

夫婦そろってボロボロのジーンズに、汚れたスゥエットシャツ。更に、なぜだかボロボロに破れかけたスーパーのプラスティックバッグを下げている。スーパーの袋なんてそこいらじゅうで新品が手に入ると思うのだが。これぞパフォーマンス。

地下鉄が大きくゆれ、奥さんが倒れそうになったりするのを支える夫。長い間、食事を食べていないから身体を支える力も無いという妻の細い腕から悲壮感が漂う。そこには夫婦愛もある。つまり貧乏ってだけでなく、このオシドリ夫婦のけなげな助け合いに感動し、ついつい誰もがクォーターを渡してしまうのだ。

同夫婦を別の日にミッドタウンの街頭で見かけたことがある。ギラギラした暑い太陽に照らされながら、 道路に座り込んで物乞いしているのを見かけた。おっと、こんなところでも営業しているのかと驚かされた。しかし、ここではホットドックを二人とも頬張っていた。

最後にもう一つ。友人とダウンタウンを歩いているとホームレスが大きな黒いプラスティックのゴミ箱をあさっていた。ホームレスは、白い小さな袋を探し出すと中に入っているピザをパクリと口にした。 しばらく歩いてその場所を通り過ぎた後、私は友人に言った。

「さすがホームレス。ピザがあの袋に入ってるってことが、よくわかったよね」
「えー?あぁ、そういえばピザ食べてたよね」今頃、気づいたかのように言う友人。
「あのピザはゴミ箱から拾ったんだよ」
「そうだった?」

その様があまりに自然だったので、友人はゴミ箱から取り出したものだと気づかなかったようだ。まるで冷蔵庫から残り物を取り出して食べたかのようだったのだ。潔癖な友人だからか、ゴミ箱から取り出したものだと意識しないようにしたのかもしれない。
 
ニューヨークでホームレスを観察していると、様々なパフォーマーを発見できる。ここには登場させなかったが、ミッドタウンのブルーミングデール付近で夏になると黒いプラスティックのゴミ袋を洋服代わりに着ている痩せこけた老婆がいた。

洋服なんて、ニューヨークに住んでいるホームレスならば履いて捨てるほど手に入る。しかしこの老婆は、暑い夏の日にゴミ袋を着てホームレスを演じ続けた。もう目にすることもなくなったこの老婆。今は、どうしているのか知らないが、年齢も年齢だったので、もうお亡くなりになったのかなぁ~。恐らく、パフォーマンスで稼いだ金で手に入れた高級な墓石の下に眠っているのだろう。

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